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雹神

注釈 7
431
原文字数
774
訳文字数
7
注釈数
~2
読了時間

📖日本語訳

王公筠倉は楚の地に赴任し、龙虎山に登って天师に謁見しようとした。湖に至り、舟に上がったところ、一人が小艇を駕って来て、舟の者に通達をさせた。公はその人を見ると、容貌が修長で雄偉であった。その人は怀中から天师の刺しを出して曰く、「御馬從が来られるのを聞き、先ず弩を負って迎えに来た」と。公はその予知に驚き、益々神聖視して、誠意をもって往った。
天师は食事を準備して接待した。その服役する者は、衣冠や髭鬚が多く常人と異なっていた。先の使者もその側に侍っていた。少しして、天师に向かって細語した。天师は公に謂う、「これは先生の同郷であるが、知らないのか?」公は問う。曰く、「これは世に伝わる雹神李左車である」と。公は愕然として色を改めた。天师曰く、「適才、奉旨して雹を雨にすると言ったので、辞を告げるのだ」と。公問う、「何処へ?」曰く、「章丘」と。公は接壤して関心があるので、席を離れて免れるよう乞いた。天师曰く、「これは上帝の玉勅であり、雹には額数がある。如何に徇ずることができよう?」公は哀願してやまない。天师は思案に耽って良久、乃ち顧みて嘱する曰く、「多く山谷に降らせ、禾稼を傷つけることなかれ」と。又嘱する、「貴客が坐っているので、文をもって去り、武をもってせよ」と。神は出て、庭中に至ると、忽ち足下から烟が生じ、氲氤と地を匝う。俄延して刻を過ぎ、力を尽くして騰起し、やっと庭の木より高くなり、又起きて楼阁より高くなった。霹靂一声、北へ飛んで去り、屋宇は震動し、筵器は擺簸した。公は駭えて曰く、「去って雷霆を作るのか!」天师曰く、「適才戒めたので、遅々としているのだ。不然なら、平地一声、即座に逝ってしまうのだ」と。公は別れて帰り、其の月日を志し、人を遣わして章丘を問うた。是日果たして大雨雹が降り、沟渠は皆満ちたが、田中には僅か数枚しかなかった。

📝注釈

龙虎山

中国江西省にある道教の聖地で、张天師の本拠地として知られる。

天师

道教の一派である正一道の最高指導者の称号。初代张天師は張道陵である。

刺し

古代中国における名刺のこと。

雹神李左車

中国民間信仰における雹を司る神。李左車は秦末の武将で、後に神格化された。

上帝玉勅

天帝の命令。玉勅は皇帝の詔勅を意味し、ここでは天帝の命令を指す。

禾稼

穀物の作柄のこと。

文去勿武

穏やかに去り、激しい態度をとるなという意味。

📜原文

王公筠仓,莅任楚中,拟登龙虎山谒天师。及湖,甫登舟,即有一人驾小艇来,使舟中人为通。公见之,貌修伟。怀中出天师刺,曰:“闻驺从将临,先遣负弩。”公讶其预知,益神之,诚意而往。
天师治具相款。其服役者,衣冠须鬛,多不类常人。前使者亦侍其侧。少间,向天师细语。天师谓公曰:“此先生同乡,不之识耶?”公问之。曰:“此即世所传雹神李左车也。”公愕然改容。天师曰:“适言奉旨雨雹,故告辞耳。”公问:“何处?”曰:“章丘。”公以接壤关切,离席乞免。天师曰:“此上帝玉敕,雹有额数,何能相徇?”公哀不已。天师垂思良久,乃顾而嘱曰:“其多降山谷,勿伤禾稼可也。”又嘱:“贵客在坐,文去勿武。”神出,至庭中,忽足下生烟,氲氤匝地。俄延逾刻,极力腾起,才高于庭树;又起,高于楼阁。霹雳一声,向北飞去,屋宇震动,筵器摆簸。公骇曰:“去乃作雷霆耶!”天师曰:“适戒之,所以迟迟,不然,平地一声,便逝去矣。”公别归,志其月日,遣人问章丘。是日果大雨雹,沟渠皆满,而田中仅数枚焉。