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长清僧

注釈 6
689
原文字数
1176
訳文字数
6
注釈数
~3
読了時間

📖日本語訳

山東の長清県に僧があった。道行いは高潔で、八十余りの年齢にもかかわらず、なお健やかであった。ある日、転倒して起き上がれず、寺の僧が駆けつけて救おうとしたが、既に円寂していた。僧は自ら死んだことを知らず、魂は飄々と去り、河南の地に至った。河南に故の紳士の息子がいて、十数騎を率いて鷹を使い兎を猟っていた。馬が逸れ、墜ちて死んだ。僧の魂がちょうどそこに至り、翕然として合一し、遂に蘇ってきた。召使いたちが取り囲んで問う。目を開いて曰く、「何ぞ此処に至ったや!」衆は扶いて帰す。門に入れば、白粉を塗り黛を緑にした者が、紛れて集まり問いかける。大いに駭いて曰く、「我れ僧なり、何ぞ此処に至ったや!」家人は妄言と思い、共に耳を引いて悟らせようとする。僧も自ら申し解かず、但ち目を閉じて更に言葉を発せず。脱粟を与えれば食べ、酒肉なら拒む。夜は独りで宿り、妻妾の奉仕を受けず。数日後、忽ち少し歩きたく思う。衆は皆喜ぶ。既に出て、少し定まれば、即ち諸僕が紛れて来て、金銭の帳簿、穀物の籍を持ち、雑多に会計を請う。公子は病倦を託し、悉く卸して絶つ。惟だ問う、「山東の長清県、之を知るか?」共に答えて曰く、「之を知る。」曰く、「我れ鬱陶して聊かもなし、往って遊覧せんと欲す、宜しく即ち治任せよ。」衆は新たに瘳ったので、遠くを渉るべからずと謂う。聽かず、翼日遂に発つ。
長清に抵れば、風物を昨の如く視る。途を問うる煩はなく、竟に蘭若に至る。弟子数人は貴客が至るを見て、伏して謁し甚だ恭し。乃ち問う、「老僧は焉往ったか?」答えて云う、「吾師は曩に既に物化せり。」墓所を問う。群れて導いて往き、三尺の孤坟、荒草は猶も未だ合わず。衆僧は何の意か知らず。既而馬を戒めて帰らんと欲し、嘱えて曰く、「汝師は戒行の僧なり、遺したる手澤は、宜しく恪守せよ、損壊せしむる勿れ。」衆は唯唯と応ず。乃ち行く。
既に帰れば、心を灰にし木の如く坐り、了って家務を勾当せず。数月居て、門を出て自ら遁れ、直に旧寺に抵り、弟子に謂う、「我れ即ち汝師なり。」衆は其の謬を疑い、相視して笑う。乃ち返魂の由を述べ、又生平の為せることを言い、悉く符する。衆乃ち信じ、故の榻に居させ、事を如く平日の如く為す。後公子家は屢々輿馬を以て来り、哀しんで請うるも、略して顧瞻せず。又年余、夫人は紀綱を遣わし、多くの馈遺を為す、金帛は皆却る、惟だ布袍一襲を受けるのみ。友人或いは其の郷に至り、敬って造る。其人が默然として誠篤なるを見、年僅か三十ながら、辄に其の八十余年の事を道ずる。
異史氏曰く、「人死せば魂散る、其れ千里を隔てて散らざる者は、性定なる故なり。余は僧について、其の再生を異とせず、其れ紛華靡麗の郷に入りて、人を絶って世を逃れ得たるを異とす。若し眼睛一閃きて、蘭麝が心を熏れば、死を求めて得ざる者あり、況んや僧か哉!」

📝注釈

蘭若

梵語「阿蘭若」の略で、静寂な修行場所を指し、一般的に寺院を意味する。

手澤

故人が生前に触れた物、特に遺物や筆跡などを指す。

戒行

戒律を守り修行に精いったこと。戒行の僧は戒律を厳守する僧侶を指す。

物化

人が死んで物質に帰すること、即ち死亡を意味する。

紛華靡麗

華やかで奢侈な生活を指し、ここでは世俗の富や快楽を象徴する。

蘭麝

蘭の香りと麝香を指し、高級な香料を意味し、ここでは世俗の誘惑を象徴する。

📜原文

长清僧,道行高洁,年八十余犹健。一日,颠仆不起,寺僧奔救,已圆寂矣。僧不自知死,魂飘去,至河南界。河南有故绅子,率十余骑,按鹰猎兔。马逸,坠毙。僧魂适值,翕然而合,遂渐苏。厮仆环问之。张目曰:“胡至此!”众扶归。入门,则粉白黛绿者,纷集顾问。大骇曰:“我僧也,胡至此!”家人以为妄,共提耳悟之。僧亦不自申解,但闭目不复有言。饷以脱粟则食,酒肉则拒。夜独宿,不受妻妾奉。数日后,忽思少步。众皆喜。既出,少定,即有诸仆纷来,钱簿谷籍,杂请会计。公子托以病倦,悉卸绝之。惟问:“山东长清县,知之否?”共答:“知之。”曰:“我郁无聊赖,欲往游瞩,宜即治任。”众谓新瘳,未应远涉。不听,翼日遂发。
抵长清,视风物如昨。无烦问途,竟至兰若。弟子数人见贵客至,伏谒甚恭。乃问:“老僧焉往?”答云:“吾师曩已物化。”问墓所。群导以往,则三尺孤坟,荒草犹未合也。众僧不知何意。既而戒马欲归,嘱曰:“汝师戒行之僧,所遗手泽,宜恪守,勿俾损坏。”众唯唯。乃行。
既归,灰心木坐,了不勾当家务。居数月,出门自遁,直抵旧寺,谓弟子曰:“我即汝师。”众疑其谬,相视而笑。乃述返魂之由,又言生平所为,悉符。众乃信,居以故榻,事之如平日。后公子家屡以舆马来,哀请之,略不顾瞻。又年余,夫人遣纪纲至,多所馈遗,金帛皆却之,惟受布袍一袭而已。友人或至其乡,敬造之。见其人默然诚笃,年仅三十,而辄道其八十余年事。
异史氏曰:“人死则魂散,其千里而不散者,性定故耳。余于僧,不异之乎其再生,而异之乎其入纷华靡丽之乡,而能绝人以逃世也。若眼睛一闪,而兰麝熏心,有求死而不得者矣,况僧乎哉!”