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二青

注釈 9
1033
原文字数
2355
訳文字数
9
注釈数
~6
読了時間

📖日本語訳

東郡の某甲は、蛇を使うことを業としていた。かつて飼いならした蛇を二匹持っていたが、いずれも青色であった。大きい方を大青と呼び、小さい方を二青と名付けた。二青の額には赤い点があり、特に霊敏で飼いならされており、その動きは思い通りに旋回することができた。蛇使いはこれを愛し、他の蛇とは異なるものとして扱った。一年が過ぎた頃、大青が死んだ。蛇使いはその欠けた分を補おうと思ったが、暇がなかった。ある夜、山寺に宿泊した。明けてから笥を開けると、二青も姿を消していた。蛇使いは失意のあまり死にたいと思った。あらゆる場所を探し、大声で呼びかけたが、影も形もなかった。しかし、蛇使いはこれまでも豊かな林や茂みのある場所に来ると、蛇を自由に放してやり、それが自ら戻ってくることがあった。そのため、二青も自ら戻ってくることを期待した。座って待っていたが、日が高くなっても戻ってこなかった。失望してしまい、気落ちして立ち去ろうとした。門を出て数歩歩いたところ、薪の間からひそひそと音がした。足を止めて驚いて見ると、二青が来ていた。大喜びし、まるで貴重な玉を得たようだった。路傍に肩を休めると、蛇もそこで止まった。その後ろを見ると、小さな蛇がついていた。蛇使いは撫でながら言った。「君を逝かせたと思っていた。この小さな仲間は君が薦めてきたのか?」餌を出して与え、小さな蛇にも与えた。小さな蛇は去らなかったが、身をすくめて食べようとしなかった。二青が口に含んだ餌を与えると、まるで主人が客に譲るような様子だった。蛇使いが再び餌を与えると、やっと食べ始めた。食べ終わると、二青と共に笥の中に入った。担いで行き、技を教えると、旋回や折り返しの動きはすぐに規則に合致し、二青と少しも変わらなかった。そのため、これを小青と名付けた。四方で技を披露し、計り知れない利益を得た。
蛇使いが蛇を使う際には、大抵二尺を限度としていた。大きくなると重くなり、すぐに入れ替えるのが常だった。しかし二青は飼いならされていたため、すぐには捨てなかった。さらに二三年が過ぎると、三尺余りに成長し、寝ると笥がいっぱいになった。そこで蛇を放つことを決めた。ある日、淄邑の東山の間に来て、美味しい餌を与え、祈って放してやった。去ってからしばらくすると、再び戻ってきて、笥の外を蜿蜒と這っていた。蛇使いは手を振って言った。「去れ!世に百年続く宴はない。これからは大きな谷に隠れて生きよ。必ず神竜になるだろう。笥の中にいつまでも居ることはできないのだ。」蛇は去った。
しばらくすると再び戻ってきて、手を振っても去らなかった。頭を笥に突き当てるようにした。笥の中にいた小青も、震えるように動いた。蛇使いは悟った。「小青と別れたいのではないか?」と。そして笥を開けた。小青はすぐに出てきて、二青と頭を交わし舌を出し合い、まるで話し合っているようだった。やがて蛇はそれぞれの道を進み、共に去った。蛇使いは小青も戻ってこないだろうと思ったが、しばらくすると小青だけが踽踽と一人で戻ってきて、笥の中に入って寝た。それ以来、蛇使いはどこでも蛇を物色したが、良いものは見つからなかった。小青も次第に大きくなり、使うことができなくなった。後に一匹得たが、やや飼いならされていたものの、やはり小青には及ばなかった。そして小青は子供の腕よりも太くなった。
それ以前、二青は山中で樵夫たちによく見られていた。さらに数年が過ぎると、数尺に成長し、体の太さは碗ほどになった。次第に人を追いかけるようになり、旅人たちはその道を通ることを戒めた。ある日、蛇使いがその場所を通りかかると、蛇が風のように突然現れた。蛇使いは大きな恐怖を感じて逃げた。蛇はますます急いで追いかけてきた。振り返るとすでに間近に迫っていた。しかしその頭を見ると、朱色の点がはっきりとあり、これが二青であることに気づいた。担いでいた物を下ろして呼びかけた。「二青、二青!」蛇は突然止まった。頭を上げてしばらくしてから、蛇使いの周りを旋回するようにして纏った。昔蛇使いが蛇を使っていた時のような様子だった。蛇使いはその意図が悪くないことを感じたが、体が巨大で重たいため、その纏わりつくのに耐えられなかった。地に倒れて祈ると、やっと離れてくれた。蛇は再び頭を笥に突き当てた。蛇使いはその意図を悟った。「小青と別れたいのではないか?」と。そして笥を開けた。小青はすぐに出てきて、二青と頭を交わし舌を出し合い、まるで話し合っているようだった。やがて蛇はそれぞれの道を進み、共に去った。蛇使いは小青に向かって言った。「久しく君と別れたいと思っていた。今や伴侶ができた。」そして二青に言った。「君が小青を引き連れて来てくれたのだから、今度は引き連れて去ってくれ。一言付け加えるが、深山には食べ物や水が豊富にある。旅人を妨げて天罰を受けるようなことをしてはならない。」二匹の蛇は頭を垂れ、まるでその言葉を受け入れたかのようだった。すぐに立ち上がり、大きい方が前に、小さい方が後ろについて、通った所の林木はその勢いで二分された。蛇使いは立ち尽くして見送り、姿が見えなくなるまで立っていた。それ以後、旅人たちは以前通りその道を通るようになり、二匹の蛇がどこに行ったのかは誰も知らなかった。
異史氏曰く、「蛇は愚かな生物であるが、旧友を恋しがる意気があり、また諌言を受け入れるのも容易い。不思議なことに、人として厳然たる者たちが、十年もの間の親しい友人や、数代にわたって恩恵を受けた主君に対して、裏切りや害を加えようとする。あるいは忠告を投げかけても、悍ましくも顧みず、怒って仇敵とする者もいる。これらの者たちは、この蛇よりも下にあるのではないだろうか。」

📝注釈

笥(けい)

竹で作られた箱。蛇を入れて運ぶための容器。

弄蛇(ろうだ)

蛇を使って芸を披露すること。

霊敏(れいびん)

動作が速くて巧みなこと。

蜿蜒(えんえん)

蛇が這う様子。

踽踽(きょきょ)

一人で孤独に歩く様子。

樵夫(しょうふ)

山で薪を刈る人。

天罰(てんばつ)

神が与える罰。

異史氏(いしし)

蒲松齢が自身の評論を述べる際に用いる称号。

下井投石(げいせきとうせき)

人が困っている時にさらに困難を与えること。

📜原文

东郡某甲,以弄蛇为业。尝蓄驯蛇二,皆青色;其大者呼之大青,小曰二青。二青额有赤点,尤灵驯,盘旋无不如意。蛇人爱之,异于他蛇。期年,大青死,思补其缺,未暇遑也。一夜,寄宿山寺。既明,启笥,二青亦渺。蛇人怅恨欲死。冥搜亟呼,迄无影兆。然每至丰林茂草,辄纵之去,俾得自适,寻复返;以此故,冀其自至。坐伺之,日既高,亦已绝望,怏怏遂行。出门数武,闻丛薪错楚中,窸窣作响,停趾愕顾,则二青来也。大喜,如获拱璧。息肩路隅,蛇亦顿止。视其后,小蛇从焉。抚之曰:“我以汝为逝矣。小侣而所荐耶?”出饵饲之,兼饲小蛇。小蛇虽不去,然瑟缩不敢食。二青含哺之,宛似主人之让客者。蛇人又饲之,乃食。食已,随二青俱入笥中。荷去教之,旋折辄中规矩,与二青无少异,因名之小青。衒技四方,获利无算。
大抵蛇人之弄蛇也,止以二尺为率,大则过重,辄便更易。缘二青驯,故未遽弃。又二三年,长三尺余,卧则笥为之满,遂决去之。一日,至淄邑东山间,饲以美饵,祝而纵之。既去,顷之复来,蜿蜒笥外。蛇人挥曰:“去之!世无百年不散之筵。从此隐身大谷,必且为神龙,笥中何可以久居也?”蛇乃去。
已而复返,挥之不去,以首触笥。小青在中,亦震震而动。蛇人悟曰:“得毋欲别小青也?”乃发笥。小青径出,因与交首吐舌,似相告语。已而委蛇并去。方意小青不还,俄而踽踽独来,竟入笥卧。由此随在物色,迄无佳者,而小青亦渐大,不可弄。后得一头,亦颇驯,然终不如小青良。而小青粗于儿臂矣。
先是,二青在山中,樵人多见之。又数年,长数尺,围如碗;渐出逐人,因而行旅相戒,罔敢出其途。一日,蛇人经其处,蛇暴出如风。蛇人大怖而奔。蛇逐益急,回顾已将及矣。而视其首,朱点俨然,始悟为二青。下担呼曰:“二青,二青!”蛇顿止。昂首久之,纵身绕蛇人,如昔弄状。觉其意殊不恶,但躯巨重,不胜其绕;仆地呼祷,乃释之。又以首触笥。蛇人悟其意,开笥出小青。二蛇相见,交缠如饴糖状,久之始开。蛇人乃祝小青曰:“我久欲与汝别,今有伴矣。”谓二青曰:“原君引之来,可还引之去。更嘱一言:深山不乏食饮,勿扰行人,以犯天谴。”二蛇垂头,似相领受。遽起,大者前,小者后,过处林木为之中分。蛇人伫立望之,不见乃去。此后行人如常,不知二蛇何往也。
异史氏曰:“蛇,蠢然物耳,乃恋恋有故人之意,且其从谏也如转圜。独怪俨然而人也者,以十年把臂之交,数世蒙恩之主,转思下井复投石焉;又不然,则药石相投,悍然不顾,且怒而仇焉者,不且出斯蛇下哉。”