第53話
こしょう
注釈 5件
494
原文字数
1164
訳文字数
5
注釈数
~3分
読了時間
📖日本語訳
韓光祿(大千)の家僕が、広間(廈)で夜を過ごしていると、楼上に灯りが見えた。明るい星のようであった。間もなく、その灯りがひらひらと漂い落ち、地に着くと犬に化けた。それを横目で見ていると、犬は屋敷の後ろへ回って行った。
急いで起き、こっそり後をつけると、庭園の中に入り、女子に化けた。心中、それが狐だと悟り、元の場所に戻って寝た。
しばらくすると、その女が後ろから近づいてきた。家僕は佯寐(眠ったふり)をしてその成り行きを見た。女が身をかがめて彼を揺さぶると、家僕は目を覚ましたふりをして、誰だかと尋ねた。女は答えない。
家僕が言う。「楼上の灯りは、あなたではなかったのか?」
女が言う。「もう知っているのに、どうしてまた尋ねるのです?」
そうして共に寝るようになった。昼は別れ、夜は会うことを常とした。
主人がこのことを知り、二人の者を家僕の両側に寝させた。二人が目を覚ますと、自分たちは床の下に転がっており、いつ落ちたのかもわからなかった。主人はますます怒り、家僕に言った。「(女が)来たら、捕まえて連れて来い。そうでなければ、鞭で打つぞ!」 家僕は口がきけず、承知して退いた。
そこで考えた。捕まえるのは難しいが、捕まえなければ罰を受ける。思い悩んで策がなかった。ふと、女が小さな紅い衫(うちかけ)を肌身離さず着ており、一時も脱ごうとしなかったことを思い出した。きっとそれが急所に違いない。これをつかめば脅しに使える。
夜、女が来て尋ねた。「主人が私を捕まえろと命じたでしょう?」
「確かにそうだ。しかし、私たち二人の情愛を思えば、どうしてそんなことができようか」
寝る時、こっそり彼女の衫をつかむと、女は急に泣き叫び、力ずくで脱して逃げて行った。これ以来、ぱったりと来なくなった。
後日、家僕が他の地方から帰る途中、遠くに女が道端に座っているのを見た。近づくと、袖を上げて顔を隠した。家僕が馬から下りて呼びかけた。「どうしてそんなそぶりをするのか?」 女は立ち上がり、手を握って言った。
「あなたはもう昔のよしみを忘れたかと思いました。(でも)まだ昔なじみの情けを惜しんでくれるのですね。その情けはまだ許せるものです。あの時のことは主人の命令によるもので、あなたを責めはしません。しかし、私たちの縁分はもう尽きました。今、少し酒宴を設けましたので、別れを告げるためにお入りください」
時は秋の初め、高粱(コーリャン)がちょうど生い茂っていた。女は彼を連れて中に入ると、そこには大きな邸宅があった。馬をつなぎ中に入ると、広間にはすでに酒と肴が並んでいた。ちょうど座ると、侍女たちが料理を運んできた。
日が暮れようとした時、家僕は用事があり、主人に報告しなければならなかった。そこで別れることにした。外に出ると、そこはやはりただの田んぼのあぜ道であった。
急いで起き、こっそり後をつけると、庭園の中に入り、女子に化けた。心中、それが狐だと悟り、元の場所に戻って寝た。
しばらくすると、その女が後ろから近づいてきた。家僕は佯寐(眠ったふり)をしてその成り行きを見た。女が身をかがめて彼を揺さぶると、家僕は目を覚ましたふりをして、誰だかと尋ねた。女は答えない。
家僕が言う。「楼上の灯りは、あなたではなかったのか?」
女が言う。「もう知っているのに、どうしてまた尋ねるのです?」
そうして共に寝るようになった。昼は別れ、夜は会うことを常とした。
主人がこのことを知り、二人の者を家僕の両側に寝させた。二人が目を覚ますと、自分たちは床の下に転がっており、いつ落ちたのかもわからなかった。主人はますます怒り、家僕に言った。「(女が)来たら、捕まえて連れて来い。そうでなければ、鞭で打つぞ!」 家僕は口がきけず、承知して退いた。
そこで考えた。捕まえるのは難しいが、捕まえなければ罰を受ける。思い悩んで策がなかった。ふと、女が小さな紅い衫(うちかけ)を肌身離さず着ており、一時も脱ごうとしなかったことを思い出した。きっとそれが急所に違いない。これをつかめば脅しに使える。
夜、女が来て尋ねた。「主人が私を捕まえろと命じたでしょう?」
「確かにそうだ。しかし、私たち二人の情愛を思えば、どうしてそんなことができようか」
寝る時、こっそり彼女の衫をつかむと、女は急に泣き叫び、力ずくで脱して逃げて行った。これ以来、ぱったりと来なくなった。
後日、家僕が他の地方から帰る途中、遠くに女が道端に座っているのを見た。近づくと、袖を上げて顔を隠した。家僕が馬から下りて呼びかけた。「どうしてそんなそぶりをするのか?」 女は立ち上がり、手を握って言った。
「あなたはもう昔のよしみを忘れたかと思いました。(でも)まだ昔なじみの情けを惜しんでくれるのですね。その情けはまだ許せるものです。あの時のことは主人の命令によるもので、あなたを責めはしません。しかし、私たちの縁分はもう尽きました。今、少し酒宴を設けましたので、別れを告げるためにお入りください」
時は秋の初め、高粱(コーリャン)がちょうど生い茂っていた。女は彼を連れて中に入ると、そこには大きな邸宅があった。馬をつなぎ中に入ると、広間にはすでに酒と肴が並んでいた。ちょうど座ると、侍女たちが料理を運んできた。
日が暮れようとした時、家僕は用事があり、主人に報告しなければならなかった。そこで別れることにした。外に出ると、そこはやはりただの田んぼのあぜ道であった。
📝注釈
光禄(こうろく)
「光禄寺」に属する官職。宮廷の祭祀・宴会などを掌る。
睨之(げいし)
「横目でそれを見る」。そっと観察する様子。
阳寐(ようび)
「陽(いつわり)に寐(ねむ)る」。眠ったふりをする。
行炙(こうしゃ)
「炙った肉などを運ぶ」。もてなしの料理を給仕する。
缘分已尽(えんぶん い じん)
「縁分がすでに尽きた」。人と妖、あるいはかつての情交の関係が終わることを示す決定的な言葉。
📜原文
韩光禄大千之仆,夜宿厦间,见楼上有灯,如明星,未几,荧荧飘落,及地化为犬。睨之,转舍后去,急起,潜尾之,入院中化为女子。心知其狐,还卧故所。俄女子自后来,仆阳寐以观其变。女俯而撼之,仆伪作醒状,问其为谁,女不答。仆曰:“楼上灯光,非子也耶?”女曰:“既知之,何问焉?”遂共宿之。昼别宵会,以为常。
主人知之,使二人夹仆卧,二人既醒,则身卧床下,亦不觉堕自何时。主人益怒,谓仆曰:“来时,当捉之来;不然,则有鞭楚!”仆不敢言,诺而退,因念捉之难,不捉惧罪,展转无策。忽忆女子一小红衫,密着其体,未肯暂脱,必其要害,执此可以胁之。夜来,女至,问:“主人嘱汝捉我乎?”曰:“良有之。但我两人情好,何肯此为?”及寝,阴掬其衫,女急啼,力脱而去。从此遂绝。后仆自他方归,遥见女子坐道周,至前则举袖障面。仆下骑,呼曰:“何作此态?”女乃起,握手曰:“我谓子已忘旧好矣。既恋恋有故人意。情尚可原。前事出于主命,亦不汝怪也。但缘分已尽,今设小酌,请入为别。”时秋初,高粱正茂。女携与俱入,则中有巨第。系马而入,厅堂中酒肴已列。甫坐,群婢行炙。日将暮,仆有事,欲覆主命,遂别,既出,则依然田陇耳。